【時視各角】スラムダンク熱狂者たちの時代=韓国
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.02.01 08:36
劇場内の熱気はとにかくすごかった。30代と見られる隣の席の2人の男性が何度も涙を拭いていた。名言が登場するシーンでは短い感嘆の声を上げた。公開4週目にしてボックスオフィス1位に返り咲き、200万人に肉迫する観客を集めている日本の劇場版アニメ『ザ・ファースト・スラムダンク(THE FIRST SLAM DUNK)』のことだ。1990年代に大人気を博したバスケットボール漫画『スラムダンク(SLAM DUNK)』の後続作だ。当時原作漫画のファンだった30~40代が興行の中心に立ち、これに10~20代が加勢するような形だ。原作漫画だけでなく関連出版物、グッズも翼が生えたように売れている。先週末、ソウル汝矣島(ヨイド)のデパート「ザ・現代」に用意されたポップアップストアにはフィギュアや限定ユニフォームなどを買おうとする数百人の若いファンが氷点下という天候の中にも関わらず明け方から「オープンラン」(立場待ち)の列に並んだ。好きなものは「堀って、また掘って」過消費する「digging」カルチャーの一環だ。SNSには26年ぶりに帰ってきた『スラムダンク』を「謁見」した感動後記や長年のファンであることを告白する称賛文、映像があふれている。同作に熱狂するファンを「スラムダンクに狂った者」という意味の「スルチンジャ」という言葉も出てきた。繰り返し映画を見る、いわゆる「N回鑑賞」も続いている。『スラムダンク』はSBS(ソウル放送)でテレビ漫画映画として放映されたこともあり、当時の声優の声をもう一度聞くことができる吹き替え版も人気だ。
1998年の日本大衆文化開放に先立ち92年に韓国で出版された原作漫画は青少年の必読書であり、90年代バスケットボールブームの火付け役だ。高校の弱小バスケットボール部が全国制覇を夢見て成長していく「アンダードッグ」ストーリーだ。最近流行っている「チュンコンマ」(重要なのは折れない心)の元祖と言える。「左手は添えるだけ」「諦めの悪い男」「オヤジの全盛期はいつだ? オレは…オレは今なんだよ!」「あきらめたらそこで試合終了だよ」のような名言が有名だ。名言はミームになってネット上に広がり、このようなツールに慣れ親しんでいる10~20代が今回新たに『スラムダンク』ファンに流入した。原作漫画は日本で1億7000万部、韓国で1450万部が売れた。90年代アジアを席巻した日本漫画の地位、韓流に先立ち韓国の大衆文化に強大な影響力を及ぼしたJコンテンツの威力を思い出させる。
映画はOTT時代の劇場の進むべき道も示してくれている。 映画は一種の「思い出召還旅行」イベントとして消費されるが、これは最近驚異の技術力の饗宴で1000万人の観客を動員した『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(アバター2)』がそうだったように、単に素晴らしい映画を見るためだけに劇場に行くわけではない点を見せてくれている。特別な「体験」場所としての劇場だ。原作者である井上雄彦監督が脚本・演出を引き受けた映画は、コンピュータグラフィック(3D)と手のスケッチ(2D)を適切に配置し、キャラクターを追うカメラの目線で選手たちの動きに密着してこれを表現し、並ならぬ迫力感をスクリーンに投影している。『神と共に』の漫画家チュ・ホミンは「漫画本が生きて動いているような感じ」と評した。