ウクライナ戦争で悪名を馳せたロシアの民兵隊ワグネルグループとは別にロシアで新しい傭兵部隊「コンボイ」（護衛隊の意）が昨年末に創設されたことがわかった。ワグネルグループに代表されるロシアの傭兵は残酷な戦術で米英情報当局の監視対象になってきた。

フランス２４が８日に伝えたところによると、２０１４年からロシアが占領しているクリミアで昨年１１月に新たな民兵隊が創設された。クリミア共和国の首長セルゲイ・アクショーノフ氏が民兵隊創設を主導した。彼は過去にはギャング団に身を置いた人物で、「ゴブリン」というニックネームがついたという。アクショーノフ氏はこうした過去を否定している。

ロシア語基盤の非営利調査報道メディア「バージニエ・イストーリー」の報告書によると、コンボイは昨年の発足当時３００人規模で始まった。彼らはテレグラムで自分たちを「少数精鋭部隊」で広報しながら隊員を募集している。「強い正統派のロシア」「ウクライナのサタン主義者」のような文言も使われた。隊員は小銃を基本で備えており、狙撃手の訓練を受けている。ロシアの主力戦車であるＴ８０、Ｔ９０を保有しており、電子偵察装備まで備えている。ワグネルグループ創設者のエフゲニー・プリゴジン氏と懇意にしているコンスタンチン・ピカロフ氏が「マザイ」という別名で総司令官を務めている。

５万人規模のワグネルグループと比べると比較的新しいグループだが、ロシア首脳部の権力闘争によってはワグネルグループに代わる集団になるのか関心を集めている。これと関連してフランス２４は「コンボイの出現はロシア大統領府がウクライナ戦争でワグネルグループの支配的な役割を減らそうとしているという一貫した報道が出ている中でなされたもの」と指摘した。

プーチン大統領の料理人出身であるプリゴジン氏は戦争局面でワグネルグループを前面に出し権力の核心部に一気に上り詰めた。元囚人が含まれたワグネルグループは激戦地であるバフムトなどで無慈悲な人海戦術によりウクライナ軍を追い詰めた。これによってモスクワではプリゴジン氏と軍首脳部の対立説など牽制の声も出ている。アクショーノフ氏はこうしたプリゴジン氏の後に従うことを希望しているという。バージニエ・イストーリーは「アクショーノフ氏は人をまねるのがとても上手で、プリゴジン氏を模倣して自分だけの勢力を作った。おそらくモスクワに自身の存在感を印象付けさせるためのもの」と指摘した。

ワグネルグループが過度に有名になったためウクライナと西側情報機関の公然の標的になった点も新しい民兵隊の浮上を呼び起こさせた。２日にワグネルグループと関連したロシアの民族主義性向ブロガーのウラドレン・タタルスキー氏がサンクトペテルブルクのカフェで白昼テロにより死亡する事件が起こった。こうした事件が起きてから英国防省は定例会見を通じ「ロシアがワグネルグループに代わる民間軍事団体を後援して開発する可能性が高い」と警告した。

アクショーノフ氏のコンボイ民兵隊のほかに、チェチェン共和国の首長ラムジャン・カディロフ氏の民兵隊も候補群に選ばれる。フランス国際戦略研究所（ＩＲＩＳ）のルーカス・オービン研究員はフランス２４に「プーチン氏は民兵隊を含むあらゆる手段を動員する点で日和見主義的権力」と分析した。

◇米流出文書にも登場したワグネルグループ

ワグネルグループは最近流出した米国防総省の機密文書にも登場した。ＣＮＮは９日、「この文書によると、知られているよりも米情報機関はロシア民兵隊であるワグネルグループに深く浸透して情報を収集したとみられる」と伝えた。ある文書にはワグネルグループのリーダー（プリゴジン氏）が「プーチン氏に対し持続的な影響力」を確保するためウクライナで戦うロシアの囚人を追加徴兵するという内部議論が含まれていた。ワグネルグループがアフリカのハイチで活動を強化するという内容も含まれた。