【コラム】金正恩の5泊6日ロシア訪問の損益計算書は(1)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.09.21 15:47
2020年12月2日。韓米情報当局者はロシア・ウラジオストクに注目していた。映画『工作 黒金星と呼ばれた男』で「黒金星」(パク・チェソ)のパートナーであり北朝鮮対外経済委処長として登場したリ・ミョンウンの実際の人物であるイ・ホナム(70代前半)国務委員会顧問が現れるとされていたからだ。偵察総局出身である彼は54歳のG氏を連れて歩いて国境を越えた。新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の流入を防ぐために北朝鮮が国境を閉鎖して人的往来が不可能だった時だ。金委員長の批准(裁可)がなければ不可能だった。南北接触窓口役だったイ・ホナムは翌年4月20日までウラジオストクに滞在して「今回帰ったら引退すると思う」と言ってG氏を紹介して引き継ぎをした。しかし情報当局は彼の訪露目的をポストコロナに備えて北朝鮮が対外接触拠点を移動するための事前作業である可能性が高いと考えた。北朝鮮がこれまで中国の北京や瀋陽、丹東で進めていた「外部人」の接触舞台をウラジオストクに移そうする動きだったということだ。北朝鮮のロシア接近が昨日今日の決定ではないということを物語っている。
◇孤独外交、得か失か
3年余り後。北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)委員長がロシアの地を踏んだ。ロシアと戦略的に協力し、新たな1ページを開いたというのが北朝鮮自らの評価だ。2018年南北首脳会談、米朝首脳会談前と後4回も習近平主席に会って相談するなど金委員長にとって中国は強力な後見人だった。そのような中国の代わりにウクライナを侵攻して国際社会で孤立したロシアに金委員長が手を差し伸べたのは意外だ。北朝鮮が関心を引いたのかもしれないが、集中監視の対象になってしまった。そうした点で金委員長の今回のロシア訪問はさまざまな面で気になる点がある。