１９９４年のインターネット革命と２００８年モバイル革命をいずれも主導した米国は今回の「生成ＡＩ革命」で製造・雇用・科学・国防の革新を同時に成し遂げようとしている。これまで２度のＩＴ革命がソフトウエア中心だったとすれば、製造業まで結合した今回のＡＩ革命はさらに包括的で果敢だ。

先月６日、米カリフォルニアのマウンテンビューで会ったグロックのジョナサン・ロス最高経営責任者（ＣＥＯ）はワシントンＤＣ出張から帰ってきて２週間で再びワシントンへの出張を準備していた。「米国製」ＡＩ半導体を求める公共機関・企業と会うためだ。ＡＩ半導体設計ユニコーンであるグロックはエヌビディアのグラフィック処理装置（ＧＰＵ）が９０％近く掌握したこの市場に挑戦している。

９月にワシントンＤＣで開かれた「先端技術サミット２０２３」でロスＣＥＯがグロックのチップを試演し、「このチップは米国で設計され、次世代チップは生産も米国でする」と話し、チャック・シューマー民主党上院院内代表とマイク・ラウンズ共和党上院議員らがいる客席から拍手が沸き起こった。グロックはテキサス州テイラーにあるサムスン電子のファウンドリー（委託生産）の最新４ナノメートル工程で来年からチップを生産する。

米国のＡＩ半導体設計企業は最近米国内生産基地に目を向けている。特にグロックとテンストレントのような有望企業がサムスンのテイラー工場と生産契約を発表し、台湾での生産から離脱した。米国政府はエヌビディアのＧＰＵの対中輸出を制裁する一方、半導体法で世界１位の半導体委託生産企業である台湾ＴＳＭＣが米アリゾナに工場を作るのに４００億ドルを投資するよう誘導した。

米国は国防へのＡＩ導入も活発だ。７月に米議会ではＡＩを情報戦に使う条項が盛り込まれた法案が通過した。すでに政府契約だけで１兆ウォン以上の売り上げがあるＡＩ分析企業パランティアのほかにも、ＡＩドローンなど国防ＡＩを開発するアンドゥリル、スタートアップのシールドＡＩのような創業５～６年の国防ＡＩユニコーンが相次いで生まれている。米陸軍用ＡＩ半導体を納品中しているグロックのロスＣＥＯは「米国政府は驚くほどＡＩ技術導入に早く動いている」と話した。

特に、ワシントンの政治とシリコンバレーのＡＩが密接に協力する背景にはシンクタンクの役割が大きい。エリック・シュミット元グーグル会長は２０１９～２０２１年に米ＡＩ国家安全保障委員会（ＮＳＣＡＩ）の委員長を務めて半導体法などＡＩ政策の下絵を描いた。委員会にはアマゾンのアンディ・ジャシーＣＥＯ、オラクルのサフラ・カッツＣＥＯら現役テック経営者も参加した。

◇中国、ＡＩ基盤インフラに転換

中国は当初からＡＩで科学と技術だけでなく、産業応用分野まで一緒に育てた。中国政府は２０１７年に発表した「２０３０年世界１位のＡＩ国」という既存の目標を２０２１年に具体化し「２０２５年までにＡＩ、５Ｇ通信、産業インターネットインフラに１０兆元投資」と実行案を出した。

特に中国政府は都市インフラ、医療、製造、交通など産業の各所でＡＩをすでに適用している。その最前線に中国の技術企業がある。バイドゥがＡＩチャットボットと自動運転を担当し、ファーウェイはＡＩ半導体とインフラを、テンセントがＡＩチャットボットとプラットフォームサービスを開発し、センスタイムが顔認識と交通管制などを担当する形だ。政府が企業に役割を分配し、同時多発的に産業の各所でスピーディにＡＩを適用した。個人情報保護や生成ＡＩの幻覚などの懸念のためスピードを出すことができない西欧企業と最も大きい違いだ。

◇ＡＩで脱石油準備するＵＡＥ

脱石油経済を準備する中東もＡＩを産業転換の機会と考える。中東地域のＡＩ技術ハブとして注目されるアラブ首長国連邦は（ＵＡＥ）は２０１７年に世界で初めて人工知能省を政府組織内に作り、５月には独自開発した巨大言語モデル（ＬＬＭ）の「ファルコン」を公開した。ＵＡＥ政府は病院予約とロボット手術にＡＩを適用しており、先月保健医療専門人工知能専門センターもスタートした。ドバイの統治者であるシェイク・モハメドＵＡＥ副大統領は「国民の医療需要を充足するだけでなく、世界的医療ハブになることがＵＡＥヘルスケアの目標」と明らかにした。

ＵＡＥのまた別の主力はＡＩを活用したデジタル政府サービスで、労働力不足を解消するためだ。「Ｕ－Ａｓｋ」など各種チャットボットを公共サービスに結合した結果、ＡＩが１万件以上の離婚調停相談を実行した。９月にＵＡＥデジタル相に会った韓国デジタルプラットフォーム政府委員会のコ・ジン委員長は「デジタル公証、電子家族相談、リモート法廷などＡＩ基盤の法務行政サービスが活発だった」と伝えた。